大塚国際美術館(鳴門市)での絵画三昧 [特別編]

Japan Cultural Development/ 10月 10, 2022/ Museum

大塚国際美術館

大塚国際美術館
徳島県鳴門市鳴門町 鳴門公園内
Tel:088-687-3737 Fax:088-687-1117

今年の夏の大塚国際美術館訪問記を遅ればせながら綴ります。ともかく世界の名作・逸品や寺院や教会、洞穴などの一部までも作ってあり、大変驚きました。またそれらが陶板に色付、焼き付けを行ったものであるということで、自由に写真も撮れる、顧客ファースト(日本人的には)の名物美術館です。もちろん全て本物ではありませんが、オリジナルの所有者との協業で似せるべく作られています。(陶板作りの工場は日本陶器の名所、滋賀県の信楽にあります)

あいにく3時間ほどしか美術館に居れなかったため、本当に駆け足で見てきましたので、大事な作品なども見逃しは多く、また音声ガイドは借りても全てを聞けずじまいでした。

そんな中で、いくつかご紹介できる分だけ記載しようと5回に分けてレポートします。

 大塚国際美術館:Part-1

 
近代的な建屋で、規模も大きな美術館にまずびっくりさせられます。大塚製薬グループが創業75周年事業として1998年に開館した美術館で、西洋名画等をオリジナルと同じ大きさに複製し展示する陶板名画美術館です。(外観の写真)バスツアーも多く来るようで、その駐車場なども大きく取っています。長いエスカレーターで上がるとそこから展示会場となります。入場料は普通の美術館に比べて高いです。これだけの規模だとそうかなと思います。

最初に飛び込んでくるのが、バチカンにあるシスティーナ礼拝堂の天井画、壁画です。当時の高名な画家達(ラファエロ、ボッチチェッリ、ペルジーノら)がこぞってここに絵を描いています。また天井画にはミケランジェロによる「旧約聖書」の「創世記」9章分が描かれていて、天井中心近くには「アダムの創造」があり迫力満点。大塚国際美術館ではこのシスティーナ礼拝堂を美術館内に作ってしまっていました。陶板もカーブを精密につけてあり、技術力もすごいですね。

 

 大塚国際美術館:Part-2

 
システィーナ礼拝堂で思いっきりインパクトを受けて、次に行くとそこはエル・グレコの世界。スペイン・マドリードのプラド美術所蔵の二つの作品とトレドの作品一点の紹介です。写真でわかるように陶板で作っているので、キャンバスと違って一枚ではなく数枚以上の陶板を組み合わせて出来ています。

最初の作品は「Trinity:三位一体」300cmX178cmの大作。エル・グレコがスペインで華やかなデビューを飾ったときの一枚と言われています。次は「St. Andrews and St. Francis:聖アンドレと聖フランチェスコ」です。こちらはエル・グレコの円熟期の作品。思いっきり十字架をX型にして両聖人がこれを抱いています。両人とも異常なまでの長身に描かれ、画面足元のち上から天上に向けて仰ぎ見るように拡大され、見るものの魂も聖人の姿を追って天国に運ばれると解説されています。

エル・グレコの三作目は彼の様式を決定づけたとされる超大作、「Burial of Count Orgaz:オルガス伯爵の埋葬(スペイントレドのサント・トメ聖堂)」です。死者の埋葬と昇天を二分割した構図とし、ビザンティンとイタリア美術を体得してきたエル・グレコの傑作とされています。

大塚国際美術館

 

 大塚国際美術館:Part-3

 

イタリアのパドウァにある豪商のエンリコ・スクロヴェーニが建立したもので、その礼拝堂の壁画です。1304年ころに画家の「Giotto:ジョット(1267頃〜1337)」が堂内の壁画装飾を担当しました。天上には美しい濃い空色の宇宙、そして両側の壁画も空色が配置されています。描かれているのは「最後の審判」、「聖母の生涯」、「キリストの生涯」など。

こちらの写真が「Last Judgement:最後の審判」の壁画

天井画は二つに区切られて、それぞれ太陽とそれを取りまく惑星が描かれている。一つの太陽には「Madonna and Son:聖母マリアとキリスト」が描かれています。

 

 大塚国際美術館:Part-4

 

ルネッサンス期の作品展示です。この展示図のように名画が一杯で・・・。かいつまんでいくつかご紹介します。もう皆さんよくご存知のものばかりでしょうけど。

まず「Annunciation:受胎告知」の数々の名画を紹介します。それぞれ、絵画の解説を要約して記載します。

その1:Fra Anjelico:フラ(1400頃〜1455)イタリア・フィレンツェ、ウフィツィ美術館

聖母は女王のように豪華でなく粗末な椅子に座り、衣服も簡素で敬虔に天使の言葉を聴いている。天使も対等にマリアに対し、敬虔に手を組んでいる。天と地が対応に相まみえる併置構造はまさにルネッサンス的です。

その2:Sandro Botticelli:ボッチチェリ(1444〜1510)イタリア・フィレンツェ、ウフィツィ美術館

聖母と天使が対等に出会うというルネサンスの様式を破っています。天使は急いで聖母のもとに現れ、緊張した面持ちでやや脅迫的に聖母に迫っています。聖母はその勢いに押されたように退きますが、思い返したように天使の方を振り返り、自らの運命を観念したかのように目を閉じています。この告知がキリストの死によって成就される贖罪のドラマの始まりのような悲壮感があります。

その3:Leonardo da Vinci:ダヴィンチ(1452〜1519)イタリア・フィレンツェ、ウフィツィ美術館

筋の通った幾何学的遠近法による空間、精密な祈祷台の浮き彫りの描写など、ダビンチの若い頃のリアリズムが出ている作品。しかし注目すべきはマリアが腹に黄金の布を巻いており、これは聖母の胎の純潔を意味するダビンチの固有の記号です。Davici Code!!

ダビンチの特徴を表しているのは、天使の横顔の繊細さと霊的な高貴さで、それは肉体的、形態的な美ではなく、精神的な妙なる美です。

「Birth of Venus:ヴィーナスの誕生」ボッチチェッリ:イタリア・フィレンツェ、ウフィツィ美術館

これも超有名な絵画ですね。説明はいらないかもしれませんが、、、でも解説文を要約しておきます。
この絵は「二人のヴィーナス」という思想から、もう一つの有名な絵画「La Primavera:春(ラ・プリマヴェーラ)」との対として語られます。こちらのヴィーナスは天上のヴィーナスで、精神的愛をつかさどったもとされます、この絵は天の愛が生まれた純粋な瞬間を描いたもので、ヴィーナスの全裸は古代ローマ以降初めて絵画に現れたため、あらゆる意味でこれは古代ヴィーナスの復活と言われます。

「La Primavera:春」ボッチチェッリ:イタリア・フィレンツェ、ウフィツィ美術館

地上のヴィーナスが気高く中央に配置され、右に西風ゼフュロス、左で踊るのは古代の三優美神です。

 

 大塚国際美術館:Part-5

 

ここまでかなり重量級の作品ばかりで本物ではないと言っても、ずばり同じ大きさで目の前に展示されていると、素人の私なぞは十分感動してしまいます。まだまだどこまでも続くのですが、ちょっと一息をいれるというか、一旦筆を置こうと思います。

自分がフィレンツェのウフィツィ美術館やマドリードのプラド美術館に行ったのは15年以上前ですし、ルーブルやオルセーも行ったのは相当前ですので、また行ける元気さがあれば行きたいですね。そして機会があれば信楽で陶板を作っている工場も見学させてもらえたら、またそのレポートも含めて掲載をしてみようと思いますので、乞うご期待です!!こちらは欧州の旅より簡単そうですので、比較的早く実現できそう。

最近実際に本物を見てきた作品を最後に紹介して、ここで大塚国際美術館とお別れします。最後を飾るのはブリューゲル(父)の作品です。

Tower of Babel:バべルの塔(Pieter of Bruegel the Elder:ブリューゲル(父))」オーストリア・ウィーン美術史美術館

3年前にウィーンに旅行ででかけたとき、多くの(といってもブリューゲル自身多くの絵画は描いていませんが)彼の作品を目にすることが出来ましたので、バベルの塔に大塚国際美術館で再会できたのは嬉しかったです。

人間の傲慢、文明の崩壊、人類の不和などのイメージを込めて描かれました。バベルの塔は旧約聖書の創世記にあります。全治に広まった人類は、力を合わせて転移届くような巨大な町と等を立て始めます。これを見た神は人類の傲慢と見て、人々の言葉を混乱させ、意思疎通できなくなった人類は建設を放棄しました。つまり適正なサイズを超えた巨大なものは滅びるという普遍的教訓を示しています。

Children’s Games:子供の遊び(Pieter of Bruegel the Elder:ブリューゲル(父))」オーストリア・ウィーン美術史美術館

町中で100人以上の子供らがあらん限りの遊びをやっています。輪回し、樽転がし、木馬、椅子取りゲーム、結婚式ごっこ、店やさんごっこなど、我々も知っている遊びがいっぱい描かれています。多分作者は、子供の遊びの中に大人の社会の模倣を数多く描き出し、大人の世界もまた子供の遊びに過ぎないというメッセージを込めたのではないでしょうか。

大塚国際美術館

長くなりましたが、有難うございます。そして大塚国際美術館さんには昔みた絵画の素晴らしい記憶・感動を呼び覚ましてもらい有り難かったです。またゆっくり行ける機会を探します。

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